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梶山理事長?学長 卒業式式辞
 平成二六年度
福岡女子大学第六二回卒業証書?学位記及び大学院第二一回学位記授与式 式辞

 
 本日、ここに集われている平成二六年度学部卒業生および大学院修了生の皆さん、御卒業おめでとうございます。また、公務ご多用にもかかわらず学位記授与式にご臨席賜りました福岡県副知事 海老井悦子(えびい えつこ)様、文教委員会委員長 津田 公治(つだ こうじ)様を始め御来賓の方々に、福岡女子大学を代表して厚く御礼申し上げます。また、式前に記念演奏をしていただいた九州大学フィルハーモニー?オーケストラの皆さん、学位記授与式を盛り上げる演奏、有難うございました。
 
 福岡女子大学で教育を受け、研究やゼミを通して自己啓発され、福岡女子大学の学部卒業生あるいは大学院修了生としての誇りを持って、晴れて社会へ巣立たれる皆さん、あるいは大学院修士?博士課程に進学される皆さんを前にして、この晴れがましい式場に漂う皆さんの自信?希望?誇りから生じる熱気を、今私自身、直に感じています。本日の学部卒業式と大学院修了式は、福岡女子大学で教育を受けたこと、あるいは研究したことが終わるという物理的節目 graduation でもありますが、さらに、自分自身の行動に責任を持つべき社会への輝かしい門出 commencement でもあります。
 
 まず、皆さんと喜びを共にしたいことは、学部卒業生の皆さんは、国際文理学部第一期卒業生ということです。何事にも、第一回というのは、責任もありますが、誇りにして良いすばらしいことです。今後、大学のどの行事でも、国際文理学部、第一期卒業生ということで紹介される機会が多いと思います。福岡女子大学は、二〇一一年(平成二三年)四月に従来の教育組織?制度を一変し、一学部に三学科の国際文理学部をスタートさせました。国際学友寮「なでしこ」で一年生の日本人学生が留学生と一緒に住み、日常生活を共にするという全寮制、学術英語プログラムでは英語で論理的思考力を高める実践英語教育の深化、自分で問題を見つけ、解決法を考え、成果を発表するファーストイヤー?ゼミによるデザイン教育の実施、さらに体験学習など、新学部スタート時は、皆さんだけでなく大学自身が多くの未経験の分野への挑戦でした。学生の皆さんからのアンケートによると、これらの大学側の挑戦?試みに対して、必ずしも満足でなかったという意見も多く、改善すべきことが多かったと痛感しています。学生と大学組織が一体となって新しい教育制度への挑戦を経験してきたことは、大学の発展と改革、さらに学生に対する実践教育による人材育成のための大変良い試行錯誤であったと、私は信じています。大学が示した教育プログラムは、学生の皆さんにとっては完璧でなかったかもしれませんが、学生自身、どの様な教育課程が自分達にとって望ましいものだったかを考えるチャンスを与えることができたこと、換言すると、体験学習とデザイン教育を学生の皆さんに同時に示すことができたという、結果的には生きた教育プログラムであったと信じています。新しい教育プログラム?制度?内容の完成には五~十年かかる、根気がいる作業と、学生の皆さんは理解して下さい。
 
 国際文理学部は、一九二三年(大正一二年)創立の福岡県立女子専門学校時代から受けついだ建学の精神「次代の女性リーダーを育成」を教育の主軸に、二〇一一年(平成二三年)に新しい教育組織としてスタートし、最初の新入生が皆さんでした。教育の理念は、「変化の時代に柔軟に対応できる豊かな知識と確かな判断力、しなやかな適応力を持ち、アジアや世界の視点に立って、国内はもとより、海外の国や地域において、より良い社会づくりに貢献することのできる女性を育成する」です。さらに、大学のミッションは、「女性が国際的な感性を持ち、主体的に活躍することを支援する」と共に「地域社会の学術?文化?生活の振興に中心的役割を果たす」です。
 
 皆さん、これらの福岡女子大学の「建学の精神」、「教育の理念」、「大学のミッション」を知っていましたか。現在、地球上の至るところで、政治?経済?民族?宗教に基づく争いが生じていますが、福岡女子大学が目指す国際教育力とは、国際的多様性を許容し、これらの問題の解決点を探ることにあります。そのための道具の一つとして国際コミュニケーション力、英語による相互理解の深化が、最重点教育課題として皆さんの入学時に求められていました。皆さんが受けてこられた学部教育をさらに深化?展開を図るために、今年四月から新たに大学院教育、人文社会科学研究科と人間環境科学研究科がスタートします。大学院教育の理念にも、文理統合教育を実現すると共に国際的多様性を理解する人材育成が求められており、その手段として異文化理解とコミュニケーション力の向上が必須となっています。
 
 地球上には、私達と異なった民族観や宗教観を持つ集団が存在していることを知ることが、「国際的多様性の許容」の基本で、皆さんは既にこの意味を理解しておられると信じています。現在の世界の情勢は、福岡女子大学が目指す国際的多様性の許容とは程遠い状況にあることも、皆さんは理解しておられると思います。地球上で起こっている民族的、宗教的、領土的争いやこれらに起因したテロ攻撃は、政治や話し合いによる国家制度の改善?改革から程遠く、ただの殺戮の場となっています。二〇一四年のテロ死者数は、過去四五年間で「最も多かった年」となり、データによると四万人を超えると予測されます。福岡女子大学の高等教育を通じて、国際的多様性の許容を学んできた皆さん一人一人は、これらの問題に対して何ができるでしょうか、皆さん一人一人の力は小さいかもしれませんが、皆さんが自らの考えで立ち向かうことは、今後の世界平和にとって非常に重要なことです。多くの争いやテロにより、あまりにも多くの尊い命が奪われています。私達はもっと「命」について真剣に考えるべきではないでしょうか。平成二六年中の交通事故による死者数は、四一一三人でした。自殺者数は、二五四二六人でした。日本における自殺者の多さに、何か救う方法が無いものかと、心を痛めます。また、川崎市で命を粗末にする痛ましい事件がありました。
 
 私は「命」の大切さを話すときには、長野県立子供病院の院内学級の生徒さんの文章をよく使わせていただいています。「電池が切れるまで―子ども病院からのメッセージ」という本の最初の文は、宮越由貴奈さん(当時小学校四年生)の「命」という詩です。この文章を読んで皆さんは、健康の方の「命」が如何に大切か、地球上で行われている争いで「命」を失うことの空しさを考えて下さい。ここで、由貴奈さんの文章を読みましょう。
 
 「命はとても大切だ。人間が生きるための電池みたいだ。でも電池はいつか切れる。命もいつかはなくなる。電池はすぐに取り換えられるけど、命はそう簡単に取り換えられない。何年も何年も月日がたって、やっと神様から与えられたものだ。命がないと人間は生きられない。でも「命なんかいらない」と言って命をむだにする人もいる。まだたくさん命がつかえるのに、そんな人を見ると悲しくなる。命は休むことなく働いているのに。だから私は命が疲れたというまでせいいっぱい生きよう。」。由貴奈さんは五歳の時、神経芽細胞腫と診断され、十一歳で亡くなりました。次の文章は由貴奈さんのお母さんの感想です。「信州大学病院で抗がん剤治療や腎臓を片方取る手術に始まり、こども病院に移って自家骨髄移植などつらい治療を受けながら入退院していた頃に書いたものです。テレビで流れるニュースではいじめだとか自殺だとか多く、生きたくても生きられない友達がいるのに自殺なんて???そんな感じでした。「命」という詩は十一年という短いけれど凝縮された人生の中で得た勉強の成果なのではないでしょうか」と、お母さんは綴っています。卒業式というお目出たい席で「命」について話すことは、場所柄相応しかったかどうか分かりません。しかし、皆さんの今後の長い人生で、「命」ということを是非真剣に考え続けてほしいと思います。
 
 国際文理学部の卒業式は今年度が最初です。輝かしい伝統があり、社会で活躍しておられる多くの優秀な先輩を輩出してきた福岡女子大学の国際文理学部の第一期卒業生という責任を持って皆さんは社会に旅立たれるのです。福岡女子大学の「建学の精神」、「教育の理念」、さらに「大学のミッション」や伝統は、新生国際文理学部の後輩の学生に引き継がれます。輝かしい伝統をもつ福岡女子大学で学び身に付けた能力や経験を充分に発揮し、皆さんの後に続く後輩達への良き道しるべとなる様に活躍してください。そのためには心身共に健康であることが不可欠です。私達に与えられたたった一つの「命」の尊さと他人の痛みの分かる心を備えた大人として活躍されることを願って、学位記授与式の式辞といたします。
 
「命の尊さ」

    
平成二七年三月二四日                          
福岡女子大学 理事長?学長 梶山千里